アンテナ図鑑：東京アンテナ工事株式会社

地デジが開始された２００３年頃には、デジタルチューナーの心臓部の開発を大手メーカーが競っていたため、ソニー・松下など名だたるメーカーの、しかもデジタル３波タイプしか発売されなかった。結果的に開発競争はアクトビラやブルーレイなどデジタル規格をほぼ制圧した松下が圧勝した形になったが、実売の店頭価格で６〜７万円以上していたので、我々のような専門業者が買う程度であった。（専門業者はデジタル受信機（チューナー）に興味があるが、一般ユーザーはチューナーよりもデジタルテレビ本体に興味があるという当たり前の理由による。）
したがって、約４〜５年かかって半額になってきた。しかしこの下落スピードは液晶テレビの１インチ１万円という常識から、現在の１インチ３千円への推移と比較すると明らかに遅い。デジタルチューナーも３分の１になっていてもおかしくない位の年月が経っているのではなかろうか？

たまに常識力のあるところを披露しておかないとホームページ来訪者が減少するので、物販の常識を一つ。販売量と価格は比例する（当たり前ですね）。つまり売れるモノは安くなり、売れないモノは高止まりする。ご存知のようにデジタルテレビは売れている。だからどんどん安くなる。しかし、デジタルチューナーは売れない。だから安くならない。
「売れない」大きな原因は２つある。
１点目は、大型量販店ではデジタルチューナーは明らかに主力商品ではないため、薄型テレビの脇に隠れるようにしか展示されていない。したがって、店頭で見つけられないのである。
２点目は、同じく売る気がないので、どこの店舗でも各店２機種程度しか展示されていない。したがって、店頭では比較できないのである。
もちろん量販店も売り上げや効率を考えれば、デジタルチューナーを１台売るよりもデジタルテレビを１台売った方が商売としては正解なので、文句は言えない。が、前述のように、売れなければ価格は下がらないのである。

＝購買層＝
デジタルチューナーは、大きさも小さく、設置も設定も非常に簡単であり、ビデオデッキ並の「持ち帰り型商品」と考えられ、ご自身でスペック比較が出来るので有れば、わざわざ実物を見て買うような商品ではなく、インターネットで通販購入することに向いている製品なのかも知れない。実際に弊社の通販でもベスト３に入っている。（この場を借りて、厚く御礼申し上げます。）

購買層は、デジタルテレビ購入者またはパススルーＣＡＴＶの加入世帯で２〜３台目のアナログテレビ用として購入していると思われがちだが、全体数に比較すると、その手の購入者は非常に少ないのである。
実際にはテレビ電波障害の地デジ対策※として購入される場合や学生向けマンションなどに全室設置される場合など、組織的に購入するケースが大半を占める。つまり個人消費者向商品であるにもかかわらず、実際の購入者は「まとめ買い」的要素が強いのである。逆説的に申し上げれば、今後、テレビ映りが慢性的に悪い集合住宅等の地デジ導入が進むことにより、ほぼ「まとめ買い」に近い市場が発生するため、需要が急激に加速すると考えられるのである。

※テレビ電波障害の地デジ対策：アナログの電波障害が発生した場合、アナログの映りを原状回復してアナログ電波障害の対策工事とするのがほとんどであったが、用対連の対策手法の中にアナログ障害をデジタルで解消するスキームが紹介されたため、３〜４年前から民間の電波障害対策手法の１つとして広まった。基本的にはアナログ電波障害を受けた建物の屋上にデジタル用のアンテナを設置し、アナログテレビにデジタルチューナーを設置する工事となる。アナログでは電波障害になるが、デジタルなら電波障害にならないエリアには有効な対策手法である。